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Experimental Method
固体中の電子を実験的に観測するために、「光」を使っています。「光は波であり粒である(波動性と粒子性)」という不思議なものですが、我々の生活になくてはならないものです。光の流動性の指標である波長で分類され、人が色として認識している光の領域は「可視光」と呼ばれています。私はそれよりも波長の短い光である「紫外線」や「X線」を使って実験しています(図1)。
光を使った実験手法は数多くありますが、中でも私は「光電子分光/X線吸収分光/共鳴非弾性X線散乱」を使っています。図2で示したように、測定原理や長所短所は各々異なりますが「ターゲット物質の電子状態を調べる」目的は同じです。どのような視点から電子状態そして物性を明らかにするかが大切になります。適材適所に実験手法を使って行くことで、様々な物質を対象として研究をでき、見えなかった電子状態を可視化して行きます。
光電子分光
Photoemission
Spectroscopy
(PES)
紫外線やX線を固体に入射すると、外部光電効果によって固体中から電子が放出されます。この放出された電子(光電子と呼びます)の運動エネルギーや運動量を調べることで固体内部の電子状態を調べます。電子を観測するため、主に伝導性の高い物質に有効な方法です。また、光の特性を利用することでより詳細な電子状態、例えば電子が描く軌道をを調べることができます。
大阪大学 基礎工学研究科 関山研究室
紫外線レーザー光電子分光装置
(大阪府豊中市)
X線吸収分光
X-ray Absorption
Spectroscopy
(XAS)
原子核付近に存在する電子(内殻電子と呼びます)と価電子のエネルギー差に相当するX線によって内殻電子がX線を吸収し伝導帯へ励起されます。これによって伝導電子の状態を調べる方法がXASです。内殻電子は元素によって一意に決まっているため、元素選択的に電子状態を他の電子分光と比べて容易に調べることができます。
立命館大学 放射光施設 SR Center
X線吸収分光装置
(滋賀県南草津市)
共鳴非弾性
X線散乱
Resonant Inelastic
X-ray Scattering
(RIXS)
XASでは伝導帯へ励起された内殻電子を使って伝導電子の性質を調べています。ここからさらに、励起された電子が再び内殻電子に緩和されていく際、余分なエネルギーを蛍光X線として放出します。これを分光することで元素選択的に伝導帯へ励起された価電子の状態を調べることができます。X線入射-X線発光の実験方法であるため、絶縁体に有効な手段となります。
東京大学 物性研究所 原田研究室
共鳴非弾性X線散乱装置
(SPring-8 BL07LSU)
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