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Overview

Q&A風に活動内容をまとめてみました

Q1. 何に興味があるのか?

A. 固体の中に存在する「電子」に興味があります。

 世の中の物体は様々な性質を持っています。これを「物性」と言います。物性には図1に示したように、電気的性質、磁気的性質、光学的性質、熱的性質、化学的性質の大きく5つに分類できます。大事なことはいずれの物性も固体内の「電子」が重要な役割を担っているという点です。つまり、私たちは電子の状態が分かれば、物性の仕組みを知ることができます。仕組みが分かれば、世の中に役に立つ新しい物質を作る時に「設計図」として非常に重宝します。

 私はこの物性を担う“電子”を実験装置を使って観測し、新物質創成に貢献する研究に取り組んでいます。

図1 各物性と電子の関係。各物性が絡み合うことで新しい物理現象が生まれる。

ここで、スピンは電子が持つ磁石の最小単位である。

Q2. どんな

物質群を

調べてる?

A. 「遷移金属化合物」を調べています。

 遷移金属は周期表(図2)の赤枠で示した元素です。特に地球上に比較的多く存在するマンガン(Mn)〜銅(Cu)に興味があります。

 遷移金属化合物は名の通り遷移金属を含む化合物です。その代表的な物質群として遷移金属酸化物があります。酸化物と言えば鉄や銅のサビといった身近な物質をイメージすると思います。しかし、図3のような結晶構造を作ると、永久電流が流れ、省エネの切り札として期待される「超伝導」やハードディスクなどのメモリ材料として有望視される「磁気抵抗効果」など様々な物理現象が現れます。しかし、残念なことに、いずれの物理現象も大気圧下(1気圧=1024 hPa)では室温(27℃ = 300 K)以下の低い温度で起こるものがほとんどです。

 数十年先に室温で同様の物理現象を起こす物質を生み出すために必要な要素は何か、それを明らかにするために、低温における電子状態を調べています。

 もう一つ、代表的な物質群として遷移金属錯体があります。これは遷移金属と分子でできた化合物です。代表的な物質はヘモグロビン(図4)です。肺から酸素を受け取り各臓器へ提供する機能はヘモグロビンの持つ鉄の電子状態が変化することで実現しています。この遷移金属の多機能性と分子の設計性を生体機能分野や工業分野に生かすための研究が進んでおり、1つの分子で磁石の性質を持つ「単分子磁石」や化学反応の進行を助ける「触媒」などが作られています。しかし、遷移金属錯体の電子状態は遷移金属酸化物と比べて、元素選択的に調べることが大変困難です。

 X線を用いた高エネルギー電子分光を駆使して、遷移金属が持つ電子を選択的に観測し、機能性と電子状態の関係解明に挑戦しています。

図2 周期表。赤で示した部分が遷移金属元素に相当する。

(ランタノイドも興味はありますが、それは別の話...)

図3 多様な物性を示す

層状ペロブスカイト構造

図4 中心に鉄イオンが存在するヘモグロビンの分子構造

Q3. どんな

実験手法を使っている?

A. 「真空紫外線/X線電子分光」を使って電子状態を調べています。

 レントゲン写真などで使われる「X線」を中心とした紫外線よりも波長の短い(光エネルギーの高い)光を使うことで物質内の電子を観測しています。日本国内にとても明るいX線を作り出す実験施設 「放射光施設」(図5) が存在します。この施設で研究目的に応じて以下の測定手法を使い分けて実験しています。

・光電子分光 [Photoemission Spectroscopy : PES]

・X線吸収分光 [X-ray Absorption Spectroscopy : XAS]

・共鳴非弾性X線散乱 [Resonant inelastic X-ray scattering : RIXS]

実験原理などは Experimental Method で紹介します。

図5 大型放射光施設 SPring-8

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